福井県下小学校児童および中学校生徒を対象とした第60回福井県小中学校図画作文コンクール

審査総評

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  • 作文審査総評

図画審査総評

第60回図画の部審査会第60回図画の部審査会
 60回目を迎えた伝統ある本コンクールに、県内の学校から4,700点を超える応募がありました。出品された児童・生徒の皆さんや、指導された先生方の熱心な取組みに、心から感謝いたします。
 隅々まで丁寧に描かれた作品が多く、作品から伝わってくる感動や思いを感じながら、一点一点慎重に審査いたしました。金賞受賞作品を中心に、審査員の講評を取りまとめ、総評を述べます。
 低学年は、楽しかったことや心に残ったことなど体験したことや、想像した楽しい世界を、伸びやかなクレヨンの線で生き生きと描いた作品が多くありました。1年生の作品は、大きな木の上でたくさんのお友達と楽しく過ごしている様子がのびのびと描かれています。こんな大きな木があったらこんなことしたいなと、想像を膨らませながら楽しく描き進めていった様子が目に浮かびます。鮮やかな葉っぱのベッドや木のブランコなど夢が広がる作品です。2年生の作品は、色や模様を変化させた四角形が規則正しく敷き詰められています。これは何だろうと、見る人の想像力をかき立てる作品です。一生懸命に床を掃除したのでしょう。床の色や模様の違いが丁寧に描かれています。スタンピングや家の様子を差し込む構成など、たくさんの表現の工夫が感じられます。
 中学年になると、感じたままに描き進めるのではなく、どう描いたらよいか考え、工夫を凝らして表現できるようになってきます。自分の思いに合わせ、表現技法を工夫して表している作品が多くありました。3年生の作品は、画面いっぱいに描かれた力強い梨の木が魅力的な作品です。多方面に伸びていく太い枝が画面に動きを生み、色を重ねることで深い味わいを生み出しています。点描で描かれた葉の濃淡で遠近感を表現し、緑でまとめられた作品の中で、明るい黄土色の梨がその存在感を放っています。4年生の作品は、緑とオレンジのコントラストが絶妙な作品です。緑とオレンジをにじませて作った紙を細かく切って雪だるまの顔にするという、その発想力に脱帽です。同じ2色を背景に持ってくることで、調和のとれた作品に仕上がっています。様々な表現技法を用いてつくった模様がとても効果的な作品です。
 高学年になると、写実的に描写する力が伸び、遠近感や立体感を意識して丁寧に描かれた作品が多くありました。5年生の作品は、1枚の写真から自由に想像を広げて表現した作品です。試験管が縦横無尽に伸び、その中を車が行き交う様子に夢が広がります。少しずつ変化するパステルカラー、夕日や雲のグラデーションの配色が、さらに世界を広げています。6年生の作品は、色とりどりの明かりがともされた冬枯れの並木を、優しく描いた作品です。カーブする道が画面を大きく分割し、奥に吸い込まれるような動きを感じます。青色を基調とした作品で、寒々とした冬の空気感を巧みに表現しています。イルミネーションの光が水面や雪に映って、夜の佐分利街道の静けさを際立たせています。
 中学生になると、感じ取ったことや考えたことから主題を見つけ、自分の思いや意図を表現できるようになります。1年生の作品は、白いカーテンの隙間から見える夕焼け空がとても美しい作品です。その日の空の様子をスマホで撮ることを日課にしているのでしょうか。現代らしいテーマで描かれています。カーテンのしなやかな動きから、爽やかな風を感じます。白いカーテン、白い壁、白い服が夕焼け空の美しさをさらに引き立てています。2年生の作品は、スノードームに見立てた自分だけの世界をとことん追求した、素晴らしい作品です。パソコンで描いたようなデザイン的な表現とポップな色調で、見る人をわくわくさせてくれます。人物の瞳は、作者自身でしょうか。現実と想像の世界の対比が大変ユニークです。
 子どもたちは自分の個性を発揮して身近な風景や体験の中から表したいことや主題を見つけ、描くことを楽しみながら絵に表しています。これは本県で推進している「個性を引き出す教育」「学びを楽しむ教育」に通じることです。子どもたちが描いた絵は、まさにその教育の表れであるといえます。
 子どもたちが思いをもって表現した絵は、子ども自身そのものです。子どもの絵を認め受け入れることは、その子自身を認めることにつながります。保護者の皆様、お子さんの絵について、どんな思いで描いたのか、絵のお話をぜひ聞いてあげてください。その話に共感するだけで、お子さんのことを大切に受け止めているメッセージになります。そして、自分の感じ方や表現が大切にされた経験が、自分とは違う他者の感じ方や表現を同じように大切だと感じられる心の育成につながっていくでしょう。
 最後になりましたが、子どもたちの生き生きとした造形活動を温かく見守っていただいている御家族の方々、そして長年にわたって本コンクールを主催し、福井県の図画工作・美術教育の向上に御尽力くださっている福井放送株式会社の方々に、心より御礼申し上げ、総評といたします。
福井県教育庁義務教育課 指導主事 下 美江

作文審査総評

第60回作文の部審査会
はじめに
 第六十回福井県小中学校図画作文コンクール「作文の部」には、六百二十三点の応募がありました。みなさんの作品を審査員の先生方とともに読ませていただき、金・銀・銅と佳作の各賞を決定しました。ここでは、本コンクールの傾向や特徴などの概評、上位入賞作品の評価などについて掲載しました。
一 小学校の作品について
 小学生の応募作品は、家族とのふれあいを通して感じたこと、学校生活の中で体験したことや思ったことを綴った作品が多数ありました。特に受賞作品には、自分自身の成長、新しい発見の喜び、世界観の広がりなどが、豊かな言葉とともに表現されていました。
 小学校三年生の金賞作品は、国語の授業をきっかけに、自分で物語を創作する喜びを生き生きと描いている作品です。読書が大好きで、自分の世界が広がっていくような、わくわくしている感じが伝わってきます。また、想像をふくらませて物語を書きたい、読む人を楽しませたいという素直な気持ちが手に取るように表現されています。
 小学校四年生の金賞作品は、学校のそうじの場面をとりあげ、自分の気持ちとその変化を素直な言葉で描いている作品です。「モケモケ」との格闘の場面は、情景が豊かに表現されているため、臨場感あふれるものとなっています。また、そうじ名人を目指す決意と目標を成し遂げたときの達成感が、読み手にもしっかりと伝わってくる作品です。
 小学校五年生の金賞作品は、将来の夢について描いた作品です。自分の好きなことを将来の職業にしたいという気持ちと、夢をかなえるためにいろいろなことを調べたり、本を読んだり試行錯誤している姿が浮かんできます。自分自身の気持ちと向き合い、将来に向けて可能性を高めていきたいという強い意志が伝わってくる作品です。
 小学校六年生の金賞作品は、幼い頃から習っているピアノを通して成長する姿が描かれている作品です。自分を支えてくれている人の温かさに気づき、がんばろうとする気持ちと、ピアノを通して学んだことを大切にしようとする姿が伝わってきます。また、成長を喜ぶピアノの先生や、お母さんの笑顔も浮かんできます。
二 中学校の作品について
 中学生の応募作品は、自分の体験を通して感じたことやわかったことを、自分の言葉で豊かに表現している作品が多数ありました。新型コロナウイルス感染症の拡大による休校中の生活や、再開後の学校生活の中で、自分のこれからの生き方を考える内容のものや、体験などを通して、自己変容に前向きな展望が見える作品も多くありました。また、中学生らしく、構成にや描写にも工夫が見られ、読み手を引き付けます。
 中学校一年生の金賞作品は、「蚊」を題材に選んだことに、まず心をつかまれます。厄介者扱いされる蚊ですが、筆者にとってはなぜか愛着を感じ、興味をそそられてしまう存在なのでしょう。日常生活の中で観察し、調べ、考えた経験が素直な言葉で語られる文章からは、自然や科学の世界への関心や探究心が伝わります。蚊について、生物や自然について、筆者と話してみたくなりました。
 中学校二年生の金賞作品は、おばあちゃんにやさしく接しなければと思いつつも、障がいというものを理解しきれず、素直になれない心の葛藤が描写されています。そして、火葬後の痛々しいお骨を目の当たりにするという実体験を通して、障がいとは、家族とは何かということを自分に問う姿から、筆者の心の温かさと強さが伝わってくる作品となりました。
 中学校三年生の金賞作品は、始まりは体育館の地響き。それは「JETS」の踊りのパワー。そのダンスに一瞬で魅了された筆者は、ただ漫然と過ごしていた中学校生活を大きく一変させ、「JETS」を目指すという夢を持ちます。「JETS」への様々な思いが、筆者の歩む道に力強さを与えます。出だしの工夫と「JETS」の魅力を語り尽くすことで、筆者の強い決意を感じさせる作品になっています。
三 作文を書く上で気をつけてほしいこと
 作文の題材に何を選ぶかは、その作文の出来上がりに大きく関わります。題材にどれだけ深く関わり、体験をしたのかという豊かさが文章表現に表れ、作品の魅力が増します。内容を象徴するものや想像できるもの、読みたくなるフレーズが題名にあると読者は引き込まれます。
 作文を書き上げたときに、もう一度読み返してみましょう。文章を書いた本人が第一の読者となって、自分の作品を読んでみてください。誤字や誤った言葉遣いなど、気になるところがないか確かめてみましょう。疑問に思ったら、人に尋ねたり辞書で調べたりします。そうすれば、自分の言いたいことと一致しているか、自分で納得する言葉が選択できているか、どのような文章の構成で書けばよいのかなど、作品の本質に関わった見直しができるようになります。記述した文章を読み返し、構成や書き表し方などに着目して文や文章を整えてください。また、語句の量を増すこと、語句のまとまりや関係、構成や変化について理解することの力をつけ、語彙を豊かにしてもらいたいと思います。
 最後に、表記について気をつけてほしいことを挙げておきます。
 一 縦書きなので、算用数字ではなく、漢数字を使用すること
 二 正しい接続詞・接続助詞や書き言葉、和語・漢語を効果的に使用すること
  (「なので」 「けど」 「じゃ」などは使用しない。)
 三 正しい原稿用紙の使い方をすること
  (読点・句点をつける場所、会話文の書き方に気をつける。)
 四 常体、あるいは敬体で、文体を統一すること
 五 時系列で書くだけではなく、工夫した構成にすること
 六 表現技法を用いること
 七 会話等を効果的に引用すること
 八 象徴する「言葉」や「物」「色」などを作品の中に入れるなどの工夫をすることもよい
 作文を書く際には、国語辞典、類語辞典、国語便覧などを手元に置き、自分の思いに合う言葉を見つけて、どんどん使ってみましょう。
四 おわりに
 今回のコンクールは、昨年からの学校の臨時休業による影響等も大きく、学校はこれまでにない大変な状況であったと拝察します。そのような環境の中においても、たくさんの児童生徒が作文に取り組み、自己表現をしてくれたことをとてもうれしく思います。今後も、生活体験や多くの出会い、または様々な表現の活動等を通して、豊かな心を育んでください。そして、 みなさんの感動や出来事を教えてください。また、御多忙な中、子どもたちに寄り添いながらご指導いただきました先生方にも深く感謝いたします。
 最後に、本コンクールが「書く」ことの力や、作文指導力の向上を図る表現活動の貴重な機会とさせていただいていることに対しまして、心から御礼申し上げます。
福井県教育庁義務教育課 主任 大佛尚彦