福井県下小学校児童および中学校生徒を対象とした第62回福井県小中学校図画作文コンクール

審査総評

  • 図画審査総評
  • 作文審査総評

図画審査総評

第62回図画の部審査会
 62回目を迎えた伝統ある本コンクールに、県内の学校から4,700点を超える応募がありました。出品された児童・生徒の皆さんや、指導された先生方の熱心な取組みに、心から感謝いたします。
 ここ数年は、コロナ禍のために子どもたちが体験を通して学ぶ機会が減っていましたが、今年の本コンクールには、実際に体験したことをテーマに描いた作品が戻ってきたように感じます。実際に見て、触って、五感を働かせる体験活動は、子どもたちの心を動かし、豊かな学びだけでなく、豊かな表現にもつながっていくのだということを改めて感じました。上位に入賞した作品には、楽しかったこと、感じたこと、驚いたこと、感動したことなどから表したいことを見つけ、工夫して表しているものが多くありました。それらの作品からは、子どもたちの声が聞こえ、その思いが伝わってきました。
 審査会では、作品から伝わってくる子どもたちの声に耳を傾けながら、一点一点慎重に審査いたしました。金賞受賞作品を中心に、審査員の講評を取りまとめ、総評を述べます。
 低学年の作品は、鮮やかな色彩と伸びやかなクレヨンの線が魅力的で、楽しみながら生き生きと描く子どもたちの姿が目に浮かぶようでした。
 1年生の作品は、画面いっぱいに描かれたショベルカーが迫力満点で、力強さを感じます。のびのびと描かれたクレヨンの線からは、夢中で楽しみながら勢いよく描き上げた様子が伝わってきます。クレヨンと絵の具の使い分けやアクセントとなる色づかいなど、色の工夫も素晴らしい作品です。
 2年生の作品は、夜空の紺色と炎の赤色の対比が見る人を惹きつけます。大きく描かれた大火勢とそれを見る人々の表情から、大火勢の迫力に驚き、圧倒される様子が伝わってきます。燃え上がる炎や飛び散る火の粉、見ている人たちの表現まで丁寧に描かれ、体験した時の感動を見事に表現しています。
 中学年になると、計画的に構図を考えたり、思いに合わせて色や表現技法を工夫したりできるようになってきます。
 3年生の作品は、校外学習でしいたけセンターへ行った時の様子を描いたのでしょう。子どもたちの表情からも、その楽しさが伝わってきます。栽培されているしいたけがリズムよく描かれており、奥にいる友だちを小さく描くことで画面に奥行きが生まれています。
 4年生の作品は、バリアフリー自転車を作る方の実話をもとに、想像を広げて描かれた作品です。よく晴れた日に、自転車で爽快に野原を駆け抜ける軽やかな気分を見事に表現しています。バリアフリー自転車に乗る人の喜びと、作った人の喜び、作者の喜びまでもが重なって伝わってきます。
 高学年では、写実的に描写する力が伸び、遠近感や立体感を意識して丁寧に描かれた作品が多くありました。
 5年生の作品は、牛の優しい目や表情が印象的です。筆跡を工夫して牛の毛並みや土の様子などを描くことで、その質感を誠実に表現しています。全体的に優しい色合いで仕上げており、牛への優しい気持ちまでもが伝わってくるようです。
 6年生の作品は、東大寺を見たときの驚きと修学旅行のわくわく感を見事に表現しています。手前にいる子どもたち一人一人の動きを工夫し、細部まで丁寧に描いています。奥に小さな人物を描くことで遠近感を出すとともに、東大寺の大きさを際立たせています。
 中学生になると、明確な主題をもち、自分の思いや意図が伝わるよう工夫して表現できるようになります。
 1年生の作品は、大胆な構図と誠実な彩色に圧倒される作品です。天守閣の上に、しゃちほこを抱えて立つ人物が堂々と描かれており、その表情と姿勢から自信と喜びにあふれた様子が伝わってきます。遠景まで続く無数の天守閣の数々から、根気強く作品と向き合い、確かに築いてきた努力の跡を感じます。
 2年生の作品は、手前に佇む黒猫の存在感が際立つ作品です。夏の暑さやお盆の時期の空気感を、色と構図の工夫によって見事に表現しています。田舎のゆったりとした時間までも感じさせ、セミの鳴き声が聞こえてくるようです。
 3年生の作品は、力強い瞳と水の中の美しい表現が魅力的な作品です。明るい熱帯の海の中に潜り、真っすぐな眼差しで見つめる先には何があるのでしょうか。そのしっかりとした眼差しからは、未知の世界にも怖気づくことなく前に進もうとする本人の芯の強さを感じます。
 図画工作・美術教育では、子どもたち自らが表したいことを見付け、その思いに合わせて工夫して表現することを大切にしています。入賞した作品からは、どれも子どもの表したい思いと工夫した表し方を見取ることができました。子どもたちは、絵を描くという行為を通して、多くの力を身に付けています。発想や構想をする力、想像する力、考える力、試行錯誤する力、工夫して表現する力、失敗を乗り越える力など、たくさんあります。これらは、これからの予測困難な時代を生きていく子どもたちにとって必要不可欠な力ばかりです。
 子どもたちが思いをもって表現した絵は、子ども自身そのものです。保護者の皆様、お子さんの絵について、どんな思いで描いたのか、絵のお話をぜひ聞いてあげてください。その話に共感するだけで、お子さんのことを大切に受け止めているメッセージになります。そして、自分の感じ方や表現を大切にされた経験が、自分とは違う他者の感じ方や表現を同じように大切だと感じられる心の育成につながっていくでしょう。
 最後になりましたが、子どもたちの生き生きとした造形活動を温かく見守っていただいている御家族の方々、そして長年にわたって福井県の図画工作・美術教育の向上に御尽力くださっている関係者の方々に、心より御礼申し上げ、総評といたします。
福井県教育庁義務教育課 指導主事 下 美江

作文審査総評

第62回作文の部審査会
はじめに
 第六十二回福井県小中学校図画作文コンクール「作文の部」には、約六二〇点の応募がありました。みなさんの作品を審査員の先生方とともに読ませていただき、金・銀・銅と佳作の各賞を決定しました。審査に当たり、作品のどのような点を評価したのかを講評します。
一 小学校の作品について
 小学校の応募作品は、身近な生活体験から発見したこと、学んだことが表現豊かに自分の言葉で述べられている作品が多くありました。また、日常生活を通して社会とのつながり、世界とのつながり、人と人とのつながりを実感している作品も多く見られました。題材として、家族と訪れた先でのことや、学校行事や地域の行事に参加したときの感情などが具体的場面と併せて述べられています。
 二年生の作品では、相手との感情の交流、特にオノマトペを用いた効果的な表現が見られました。細かく観察している様子やそこから新しい発見をしている姿が印象的です。
 四年生の作品では、社会の出来事を通して自分との関わりを見つめ直し、地域社会とのつながりを再発見している姿が描かれています。
 五年生の作品でも、地域の人との関わりや大切さ、社会の一員として自覚などが感じられる作品です。
 六年生の作品では、自己を見つめ直すことや自己との対話を通して描かれた作品が印象的です。言葉にこだわりをもって表現し、構成などに工夫が見られたことも特徴的でした。
二 中学校の作品について
 中学校の応募作品は、自分の興味・関心について、さらに内容を掘り下げて書き上げた作品が多くありました。題材としては、生活経験によるもの、社会問題や家族、友人との関係などが見られました。自分の考えだけではなく、他者の意見を受けとめ、時には資料などを通し、自己の考えを広げたり深めている姿が伝わってくるものがあり、自己との対話による成長が感じられました。
 中学校一年生の金賞作品は、「人生初めての市場」とあるように、憧れであった市場に家族と初めて訪れた時の経験等を通して、様々なもの、そして命への感謝が綴られています。特に、市場で手に入れた魚を料理する場面では、その時に抱いた「瞬間の感動」を、自分の言葉で生き生きと豊かな描写で表現しています。「ふと気づくと約四時間経過し足が曲がらず焦って」のように、物事に熱中するということ、そして「僕たち家族を笑顔にしてくれた」とあるように、自分と社会など、多くのものや人とのつながりを実感しながら、その大切さを読者に伝えています。
 中学校二年生の金賞作品は、「遠回り」から宝物を見つける筆者独特の視点や考え方が、丁寧な描写と具体的な体験とともにまとめられています。「遠回り」とは、三連休でお気に入りのお店に満員で行けなかったこと、両親との都合が合わずに友達の家から歩いて帰ったこと、勉強せずにテストを受けてよい点数を取れなかったことなど、普通なら、がっかりしてしまうような出来事です。それらを、日常のどのようなことも楽しみながら、新しい発見をしたり、その意味を自分なりに考えたりする筆者の前向きな心によって「宝物」に変えてしまうところに、この作品の魅力があります。
 中学校三年生の金賞作品は、初詣に出かけた大晦日の夜の出来事が、歯切れの良い文体で淡々と精緻に描かれています。篝火の暖かさに「火は神聖なものだと信じた人間の気持ちがよく分かった」と語っているくだりは秀逸です。眼前にある火を見つめることを通して、遠い昔にも同じように火を見つめていたであろう人々に思いをはせ、共感している様子が伝わってきます。初詣という非日常の中に、変哲ない日常の意味を見出す過程には、周囲への観察力の鋭さとともに、家族と過ごすことの尊さを短文でまとめ、言い切っている表現からは、力強さと心の成長が感じられました。
三 作文を書く上で気をつけてほしいこと(作文審査を通して)
 作文の題材に何を選ぶかは、その作文の出来上がりに大きく関わります。また、題名にも工夫をしましょう。出来上がった作品を読み返し、自分が言いたかったことは何かを考え、作品にふさわしい題名をつけましょう。
 また、読み返す際に気をつけてほしいことは、ただ出来事だけが書かれていないか、その時に思ったことや感じたことを自分の言葉で豊かに表現できているかということです。難しい言葉を使えばいいということではなく、そのとき、自分が感じたことを丹念に表そうとしてほしいです。もちろん、「文体が統一されているか」「間違った漢字や表現が使われていないか」「原稿用紙の使い方は正しいか」という点にも気をつけましょう。
 一 文章構成について  
  ・終末(結び・主張)の部分も含めて工夫した構成にする  
  ・自分の実体験をエピソードとして入れる  
  ・会話等を効果的に引用する
 二 表現について    
  ・比喩表現を用いる際、適切に用いているかどうかを吟味する    
  ・正しい接続詞、接続助詞や書き言葉等を効果的に使用する    
  (「なので、けど、じゃ」などは使用しない)    
  ・主語と述語を対応させる    
  ・同じことの繰り返しをさけ、文章をすっきりとさせる  
 作文を書く際には、国語辞典、類語辞典、国語便覧等を手元に置き、自分の思いに合う言葉を見つけて、どんどん使ってみましょう。
四 おわりに
 今回応募いただいた作品は、人と人との感情の交流やつながり、自己との対話を通して自分の言葉で表現している様子が多く見られました。特に、自分の経験だけではなく、授業中などに学習して身に付けたことをもとに考えを深めていたり、考えるだけではなく自分で調べてわかったことをまとめたりしており、社会や地域の出来事などを自分事として受けとめ、作品に表現していることが特徴的でした。そのように表現された内容は、強い説得力をもって読者に伝わります。筆者の述べる世界が読み手に鮮やかにイメージされ、感情などが共有できました。審査員の先生方がうなってしまうような、読み手に新しい視点を与えてくれた作品も多くありました。みなさんには、これからも言葉を大切にしてもらいたいと思います。自分の伝えたいことや相手が何かを伝えようとしている時、どのような言葉をどう使えば伝わるのか、分かりやすくなるのかなど、考えながら言葉を適切に使っていくことができると、さらに豊かな表現ができると考えます。 また、日頃からご指導いただきます先生方には、授業などのご指導を通して、子どもたちの成果を本コンクールにお寄せいただきたいと存じます。
 最後に、本コンクールが子どもたちにとりまして、表現活動の貴重な機会とさせていただいておりますことに対しまして、厚く御礼申し上げます。
文責 福井県義務教育課 指導主事 大佛尚彦