ドレミの「ド」は赤色で、ABCの「A」は深紅、あいうの「あ」は桃色。他にも、あの先生は深い青に深い赤、隣の友達は水色一色など、私には色が見えるのだ。決して変な薬のせいや厨二病なんかではなく、共感覚と名前がついている。
共感覚とは、ある刺激に対して、通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚も自動的に生じる知覚現象をいう。私のようにドレミの音階や文字、人の雰囲気に色がついて見えたり、味や匂いに色や形を感じたりする人もいるそうだ。
この共感覚は、面白い反面、やっかいなこともある。例えば、教科書や黒板の板書に、自分の感覚と違う色遣いがされることがある。板書で重要なポイントの色は、私の中では黄色かピンクなのだが、それをオレンジなどの別の色で書かれると、何とも言えない違和感に襲われ、「なんで?」と不愉快になってしまう。他の人とは違うから一種の病気なのかと思ってしまうが、実際、女性の高い声を「黄色い声」と言うように、一般的な言語にも共感覚が使われていることもあり、病気認定はされていない。
また、私は絶対音感を持っている。日常生活のさまざまな雑音も、全て音階が分かるあれだ。こちらは共感覚に比べて一般的なので、知っている人も多いだろう。これも便利な反面、やっかいなこともある。少しでも音がずれていると気持ち悪く感じ、不愉快な気分になってしまうのだ。
これらの個性のせいで、以前このようなことがあった。小学生の頃、友達と歌の練習をしていると、友達が音を外して歌っていたので、親切のつもりで、
「ねぇ、さっきの音はシのシャープじゃなくでシだよ。音、半音ずれてたから……。」
と言ったら、友達にムッとされて嫌な空気になってしまった。
また、中学校に入学し軽音楽部に入ったが、友達にここの音程のとり方が分からないと相談されて、つい、
「私の場合、いつも頭の中にピアノの鍵盤があって、青も色で区別しているから、その音を色でとっているんだよね。」
と言ったら、
「えっ?色?」
と返されてしまった。自分の当たり前が、他人には当たり前ではないことを強く実感した瞬間だった。
他にも、共感覚のように病気認定されていない病気のようなものがある。最近有名なのはHSPである。これは、生まれつき非常に感受性が強く、敏感な気質を持った人のことを言う。ある日のTV番組でHSPを持った人が紹介されていた。その方が言うには、
「スーパーは箱に入れられている感じがしたり、たくさんの匂いが混ざっているから、とても不愉快に感じる。他にもトンネルなど暗い所や飛行機が乗れない……。」
とのことだった。このせいでイジメにあったこともあったそうだ。この話を聞いて、初めてHSPの特徴を知ったし、人と違う感覚に対する悩みに深く共感できた。
その番組の最後に、その方が、
「みんなに知ってもらい、共感してもらうことが一番なんですよね。病気じゃないこのような特徴は絶対にみんなにあると思うし、他人より特徴が突き抜けているだけだから、一つの個性にしていきたい。」
と話していた。これを聞いて、何だか前向きな気持ちになれた。
―――隠すのではなく知ってもらう
知ってもらうことで、個性として受け止めてもらえるかもしれないと思い、今では周りの人に少しずつ話せるようになれた。
他人にない特徴を特長にして、これからも色と音と共に毎日を過ごしていきたい。